不屈のドラゴンを支えるトレーナーはもう一人のヒーロ


日本のプロレス界に今も燦然と輝くドラゴンの星、藤波辰爾。58歳という年齢にも負けず、今も現役レスラーとしてファンの熱い声援に応えるファイトを見せてくれている。そんな藤波選手を支えているのが、トレーナーの高久裕先生。レフェリーとしても自らリングに立ち、プロレスを、プロレスラーを支えているもう一人のヒーローだ。そんな高久先生と藤波選手に、普段では伺いしれないレスラーの身体と、トレーナーの役割について伺った。

自らレフェリーとしてリングに上がる異色トレーナー

ロンドンオリンピックに湧いた今 年の夏だったが、ウサイン・ボルト選手に代表される記録に挑むアスリートは、彼を支えるトレーナーとともに自分のコンディションを大会でピークに持っていく努力をした。その努力が世界中を驚かす世界記録や、大会2連覇というパフォーマンスに結実したのだ。 このようにアマチュアスポーツ の世界は、4年に1度のオリンピックというピークを目指すのだが、プロスポーツの世界はそうでは高久裕先生は、プロレスに魅せら れ、興業のある日は自らレフェリーとしてリングに上る、異色のトレーナーだ。彼が所属しているのは、ドラゴン殺法で一世を風靡した藤波辰爾選手が主宰する団体「ドラディション」で、遠征時はもちろんのこと、日頃から藤波選手他、長州力選手、初代タイガーマスク選手など、日本プロレス界のレジェンドたちの身体をメンテナンスしている。 ない。すべての試合がある日をピークにしなければならない。純粋に記録がすべてのアスリートと違い、プロスポーツ選手は観客あっての仕事だからだ。特にプロレスリングのようなハードな格闘技の世界では、選手の身体を預かるトレーナーはアスリートとは別の技術とノウハウが必要になる。 試合がない日には、北豊島医療専 門学校の広報部長であり、柔道整復師の先生として、一般の患者さまの治療も行う。午前中はキロ程のお年寄りの身体を診て、午後は藤波選手ら100キロ近いプロレスラーたちの身体と格闘する。「確かにすごいギャップがありますね。私はもともとプロレスのレフェリーとしてこの世界に入り、選手の身体をサポートする手伝いをしているうちに、なんとなくトレーナーになりました。我流ではなく、きちんと学びたいと思い、柔道整復師の免許を取りました。普段の日の午前中は一般の人も診ているのですが、そのときの方が緊張しますね。身体の構造は同じですが、そのパーツはまったく違う。知れば知るほどプロレスラーの皆さんの身体は脅威ですね。藤波さんは来年で還暦を迎えるんですが、世間でいえば退職する年齢ですよ。それがリングに上がって闘うのですから、常識では考えられない肉体をしています。筋肉のハリやツヤは素晴らしい。それは日頃のトレーニングやメンテナンスの賜物だと思います。ファンのために少しでも長く現役を続けてほしい。そのためにも、僕が少しでも貢献できればいいと思っています」と話す高久先生。高久先生は、歳のレジェンド・レスラーである藤波選手を支える欠けがいのないスタッフとして、誇りを持って仕事をしている。

プロレス黄金時代の復活を目指すレジェンド・レスラー

藤波辰爾そんな高久先生に日頃から身体のメンテナンスを受けている藤波選手は、猪木選手とともに新日本プロレスの黄金時代を築いたスター選手だ。100キロを超すヘビー級が主流であった日本のプロレス界に、スピードと技の切れを身上 にして、ジュニアヘビー級のチャンピオンとして、新しいプロレスの魅力とファン層を開拓した。そのファイティングスタイルと名前から〝ドラゴン藤波〟として人気を博し、必殺技であるオリジナルのスープレックスは、ドラゴンスープレックスとして対戦相手から恐れられた。その後、ヘビー級に転身し、 1981年から年にかけて、維新軍団の総帥として頭角を現していた長州力選手とライバル関係になり、長州選手とのシングルマッチは「名勝負数え歌」として、当時のファンを熱狂させた。現在、その長州選手、初代タイ ガーマスク選手とともに、「レジェンド・ザ・プロレスリング」を開催、往年のプロレスファンを再び呼び込む白熱した試合を見せている。「僕を含めて3人とも代、代という年齢で、試合前の身体のケアは若い頃より入念にしておかないとリングでいいパフォーマンスはできません。そこで高久くんの存在はありがたい限りですね。僕たちの体調を診てくれていながら、リングではレフェリーの仕事もこなしてくれる。彼がいることで僕らも思いきってファイトすることができるんですよ。遠征があれば必ず帯同してくれ、こまごまと僕らの世話を焼いてくれています。また若い選手たちにはテーピングの仕方やストレッチの仕方なども教えてくれるし、僕にとっても、会社にとっても得がたい戦力となっていますね」と藤波選手は高久先生の仕事ぶりを高く評価している。

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