「自由診療」導入の「落とし穴」を考える。


自由診療問題は、治療院経営における共通のテーマ

いま、多くの治療院で課題となっている問題に自由診療、実費診療の導入があります。保険治療だけに頼っていては、治療院としての将来に不安があり、新たな収入源としての自由診療を導入して、もっと確かな治療院経営を図りたいというものです。
現在、治療院を運営している人はもちろんのこと、今後、独立を考えている人も、この自由診療問題は治療院経営を行うすべての人にとっての共通のテーマであり、経営のカギとなるものといえるでしょう。

保険で決められた治療にしばられない自由診療は、患者様との契約で成り立つことで治療費も自由に設定でき、経営面ではとても魅力的なものですが、それだけにリスクもつきまといます。
導入のメリット、デメリットとはどういうものがあるのか。そこで今回の経営指南は、自由診療、実費診療におけるその意義と価値について考えていきたいと思います。

知識やハウツーに頼っていては決してうまくいかない

自由診療のすすめ

最近はよく、セミナーなどで自由診療導入のノウハウをレクチャーする会が人気を得ています。システムやメニューの選択をどうすればいいのか、導入する機材はどういうもので導入費やレンタル料はどのように返済すればいいのか、などこと細かく教えてくれます。これを聞くと明日からでも治療収入が格段にアップし、将来がバラ色になるような気がしてきます。しかし、現実はどうでしょう。セミナーで聞いたとおりに導入したけれど、その後、ちっとも売上は上がらないと嘆いている治療院経営者も少なくないと私は思っています。

そもそもこうした治療院は、なぜ自由診療を導入しようと考えたのでしょうか。
もっと売上を上げて将来に備えようとしたのか。メニューを増やして他院との差別化を図ろうとしたのか。通院してくれる患者さまのニーズに応えようとしたのか。その理由がはっきりしないまま、とにかくこれからは自由診療だと早急に導入しているケースが多いように思います。
なぜ導入するのかという目的が明確ではなく、導入すること自体が目的になっているのですね。これが大きな失敗の原因になっていると私は思います。

自由診療の導入で、本当に患者様は増えるか。

ある院が自由診療のシステムを導入して、ダイエットやエステに対応するメニューを新設したとします。新しい機材も入れ、スタッフに使い方のレクチャーもしました。またそれを告知するPOPやチラシもつくり、あとは来院してくれる新患を待つばかり。これで本当に女性顧客の来院が増えるでしょうか。
私の経験からすれば、残念ながら答えは「ノー!」です。どんなに新しい設備や環境を整えても、それだけでは患者さまを誘うことはできないでしょう。それは、その院の専門が何なのかが見えづらくなり、患者様を混乱させてしまう危険があるからです。
そして、本来、整骨院が持っている患者さまの信頼感や安心感が薄れてしまうわけです。また、せっかく導入した新しいシステムを活用しようと既存の患者さまにしつこく勧めると、今度はその患者さままで離れてしまいます。
お金と手間をかけた自由診療の導入により、かえって経営が悪化することもあるのです。

患者様がやってくる本当の理由

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多くの治療院が間違えてしまっていることは、新しい治療機材、エステやダイエットといった話題のメニュー、最新の治療技術があれば患者さまがやってくるだろうという思い込みです。実際の患者さまはメニューや機材、最新治療を目当てに治療院にやってくるわけではありません。
その治療院の空気、そこで働く先生たちの人間性に惹かれてやってくるものなのです。

流行っている治療院は、そこに一歩入っただけで分かります。
人を迎え入れてくれるあたたかさとホスピタリティに満ちているからです。患者さまはこの空気を感じとり、そこに通うようになります。この空気はあくまでそこで働く人たちがつくり出すもので、マニュアルやノウハウでつくれるものではありません。これこそ私が考える治療院の本質です。
歯医者さんと治療院を比較すると、もっと分かりやすくなると思います。どちらも治療する場所ですが、歯医者さんに長く通いたいと思う人はいないですよね。行きつけの歯医者さんにお土産を持って行ったり、趣味の釣りの話や町内会のお祭りの話をしに行く人もいないでしょう。でも、治療院ではこうしたことは日常なのです。
わざわざ旅行の帰りに立ち寄ってお土産を置いて行く患者さま、昨日の釣りの話の続きを今日また来て話す患者さま。身体はよくなったのになぜか通ってくれる患者さまなど、私たちはこういう患者さまを何人持てるか。それが治療院経営の基本だと私は考えます。

自由診療の成否は、人間力にある

まず、患者さまのコミュニティとして機能する治療院であること。この前提がなくては、自由診療を導入してもうまくいかないでしょう。
あくまでも、患者さまのニーズに応えるのが自由診療の目的なのです。行きつけの信頼する先生に勧められれば患者さまも新しいメニューにトライしてみようという気になります。それも押しつけではなく、自分のことをいつもよく考えてくれる先生がいうのだからという理由があるからです。それで自分の体調がよくなったという実感があれば、患者さまは喜んで自由診療を続けてくれるでしょう。
覚えておいて欲しいのは、患者さまはメニューや機械に魅力を感じるのではなく、それを自分のために勧めてくれる人間に魅力を感じて、試そうと思うということ。こうした関係ができあがっている治療院なら、自由診療の導入もうまくいくはずです。まずは治療院側の論理でなく、患者さま側の論理で考えること。
患者さまはあなたの治療院で何を望まれているのか。それをもう一度初心にかえってよく考えることが、自由診療導入の前に必要なことだと私は思います。

清水流経営 新しい機械やサービスの導入よりも、患者さまのことを第一に考える心が大切!